中国で撮られた初めての映画の物語――『西洋鏡−映画の夜明け』
2008-07-12


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中国・北京の泰豊照像館(写真館)で中国人による中国初の映画が撮られたのは1905年のこと。監督は任泰豊、撮影は劉仲倫、出演は当時の京劇の人気役者・譚〓培、映画になったのは譚の十八番「定軍山」(三国志演義から)である。この中国初の映画『定軍山』誕生を素材に1999年に中国で撮られた映画『西洋鏡−映画の夜明け』をDVDで見た。

 『西洋鏡−映画の夜明け』(Shadow Magic、1999)は、いかにも当時の映像らしくつくった街の人々や万里の長城のフィルムを各所に折り込んで、20世紀初頭の中国・北京の様子と西洋文化に触れた中国人の反応をリアルに再現している。

 ストーリーは、泰豊照像館(写真館)にカメラマンとして勤める若者・劉が、イギリス人のレイモンドが持ち込んだ活動写真、つまり映画に興味を持ち、レイモンドの映画館に協力しながら、投影と撮影の技術を習得し、様々なトラブルを乗り越えて、ついに勤め先のボスの理解を得て、中国で初めての映画を撮るまでを描いている。そのなかで、寡婦との結婚を親や雇い主に押しつけられそうになったり、京劇関係者に商売敵と見られたり、京劇の人気役者・譚の娘に恋をしたり、写真館をくびになったり、西太后の70歳の誕辰の宴によばれて火事を起こしレイモンドが国外追放になったり…と次から次へと展開してハラハラしたり、ドキドキしたり…夢を持つ青年の話だけになかなか楽しく、後味もとってもさわやかだ。

 ただ…『西洋鏡』のプロローグの部分で史実に基づいているようにナレーションが入り、映画の紹介にも「史実に基づいている」とあるにもかかわらず、調べてみると、史実に基づく部分が意外に少ないのが気になる。映画なので、普通であれば史実に基づいているかどうかはそれほど問題にならないだろうが、素材が素材なので、史実をどの程度取り入れているかは重要である。また、どこまでが史実で、どこからが虚構なのか、最後に簡単な解説でも入れて明示して欲しかった。20世紀初頭の北京を彷彿とさせる再現映像はとても好くできており、物語も楽しくさわやかで映画そのものは大好きなだけに、ちょっと残念である。
[映画鑑賞]

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