戦時教育の実際『軍国少年はこうして作られた』
2008-09-19


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先日、鹿児島の知覧特攻平和会館で帖佐勉『軍国少年はこうして作られた』(南方新社、2008)を見つけた。ミュージアムショップの店頭で何気なく手にとってみて驚いた。この本に掲載されている戦時教育の史料は、50点あまり。教科書、戦時のテスト問題、習字、作文とその評価、図画などである。

 宿題プリントには、尋常科一年の教科書『小学国語読本 巻一』の「ススメススメ ヘイタイススメ」を写したものがある。習字には「ハタ」「日本ばんざい」「弓矢たち」(←「たち」は恐らく「太刀」のことだろう)「戦争軍旗大砲」「銃後職場奉公」「赤十字傷病兵」「銃とる気持で鍬とり増産」「軍功感状上聞」他いろいろと載っている。図画にも戦争色が濃い。飛行機、戦車、訓練の様子、軍艦、日の丸の旗、空に浮かぶ凧まで日の丸一色である。唱歌も見事に戦争と天皇崇拝で彩られ、文集でも「戦地の兵隊さんへ」というコラムに子ども達の手紙が載せられ「ヘイタイサンモゲンキニシテ、テキノワルイヤツヲコロシテクダサイ。」などと綴られている。この本によって、戦時、幼い子供の心に、基礎教育を通して徐々に擦り込まれたもの、その実情を垣間見ることができたように思う。

 これほど充実した戦時教育の史料、これらは、他でもない著者の帖佐勉(ちょうさ つとむ)氏自身のもので、母親が保管していたものだという。元教師でもある帖佐氏、ご自身にとって苦い思い出の品々を、よくぞ公開してくださったものである。なんといっても、書名にある「軍国少年」は帖佐氏自身であるのだから。

 報道によれば「帖佐さんは戦時下の教育の実態を伝える活動を30年続けている。教育基本法改正などで教育の国家統制が強まっていると危機感を覚え、出版を企画した」という。帖佐氏は「特に現場の教師に読んでほしい。上から与えられた内容をよく考えず子どもにたたき込む時代を繰り返してはならない」と訴えている。

読んだ本:帖佐勉『軍国少年はこうして作られた』(南方新社、2008)
参考:“軍国少年”の記録出版 鹿児島市の帖佐さん――「教育統制」に危機感(南日本新聞HP)[URL]
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