北野武『たけしくん、ハイ!』を読む
2011-09-22


 図書館で見つけて、何気なく手に取った『たけしくん、ハイ!』。地の文が、北野武氏の口調で書かれていて、なんとも微笑ましく、ページをめくる内にいつの間にか引き込まれてしまった。

 子供時代の生活の描写は素朴でありつつ、細かい部分を適切に捉えている。登場するのは、ほろ苦い思い出ばかりだが、彼独特の口調で語られるとき、何かおかしみも感じさせる。子供だった彼の表情や、彼が見た様々な事物が、目に見えるようである。さすがに喋ることを生業にしている人だけのことはある。

気づくのは、生活の背景にある当時の日本の貧しさや金持ちと貧乏人の格差がヒシヒシと感じられたことである。彼の家庭も貧しいけれど、同級生にもボロボロの家に住み学校にもまともに通えない子、兄弟の子守をしながらも野球をする子等がいる。かつて、両親にも、戦後の貧しい日本についていろいろと聞いたのを、この本のおかげで思い出した。

読んだ本:
北野武『たけしくん、ハイ!』(太田出版、1992)


[読書日記]

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