僻地農村の学校の厳しい現実(張芸謀監督「あの子を探して」より)
2008-03-06


 中国映画には貧しい農村の学校を描いた作品がある。例えば、張芸謀監督の「あの子を探して」である。この作品に登場するのは全員が素人で、真っ赤な頬の農村の子供達がそのまま出ており、本当の農村の小学校の雰囲気を知るのにいい作品である。あらすじを紹介しよう。

 農村の小学校の教師が家庭の事情で一ヶ月帰省することになったため、代わりの教師を村長に頼んで捜したところ、若干13才の女の子しか見つからなかった。小学校しか卒業していないこの女の子は50元で農村の小学校住み込みの代用教員を引き受ける。授業だけではない、学校に住んでいる子供達の面倒も見なくてはならない。13才の先生は貴重なチョークで教科書のテキストを写し、これを子供達に写させる。教科書は彼女が教師から預かった、使い込んでボロボロの一冊しかない。歌(しかも毛沢東を讃える歌「東方紅」)を教えるが、これも13才の先生が知っている歌を振り付きで教えるというもので、教本もないし、ましてや音楽を流すカセットレコーダーもない。帰省した教師は13才の先生に生徒を一人も減らしてはいけない、と固く約束させたため、13才の先生はその言いつけを守って、家庭の借金と母親の病気のために小学校をやめて都市へ働きに行かされた生徒を探しに行く。

 これは映画であるが或る意味作り物ではない。その貧しさは今の日本人には想像するのが難しいほどである。学校側も校舎がボロボロで、教師の給料も半年も払われず、教師のなり手もなく、チョークなどの教学の必需品さえ不足している。生徒は教科書や学用品を揃えるお金もない。実際に家庭が貧しい為、学校を辞めて働きにでる子供も少なくない。

 現在、中国にも日本にも、小学校の寄付や学用品、学費の援助など、中国の僻地の初等教育の現場に手をさしのべる活動がある。このような活動が日中双方で注目され、もっと大きい善意と友好の輪となって、中国の初等教育を支える活動へと結びついて欲しいと願う。

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