台湾・国語教科書(1994年度版)掲載の日本児童文学作品
2009-06-19


今日は本を整理していて、いいものを見つけた。平成14年の『天理台湾学会年報』に掲載の張桂娥「台湾小学校国語科実験教材における現代日本児童文学作品の受容」という論文である。かねてから、興味はあるが、台湾の国語教科書の日本児童文学までは手が届いていないので、こういう研究をする方があるのは嬉しい。もっとも7年前の学会誌で、本当は目を通しているべき論文だ。正直なところ、読んだ記憶がない。早く気が付いていれば、いろいろ話を聞く機会もあっただろう。娘が一歳になるまえの時期で余裕がなかったにせよ、残念なことをした。

 この論文のデータソースは、1994年から1999年の6年間に登場した「小学校国語科実験教材」に採用された現代日本児童文学作品である。「小学校国語科実験教材」は「台湾省国民学校教師研習会国語課程研究発展小組」の主催で行われた「国語実験教材開発編纂プログラム」により導入された実験教材である。

 私の目を引いたのは何と言っても、採用された作品だ。黒柳哲子『窓際のトットちゃん』、瀬田貞二『アフリカのたいこ』、谷内こうた『なつのあさ』、宮川ひろ『るすばん先生』、古田足日『宿題ひきうけ会社』『モグラ原っぱのなかまたち』、丘修三『ぼくのお姉さん』、安房直子『秋の風鈴』の一部が採録されているらしい。

 考えるに、黒柳哲子『窓際のトットちゃん』は1980年代から90年代、台湾で大人気だったから、子供たちにとってお馴染の作品だろう。瀬田貞二『アフリカのたいこ』、古田足日『モグラ原っぱのなかまたち』、安房直子『秋の風鈴』、丘修三『ぼくのお姉さん』は、日本の小学校の国語教科書で教材として導入されていた(あるいはいまも学習されている)定評のある作品である。このなかでも古田足日『モグラ原っぱのなかまたち』については訳本を偶然手に入れた編集委員の強い推薦で導入が決まったらしい。分析によれば、これらの現代日本児童文学作品は、低学年の基礎的言語学習をクリアした中学年以上の学習者を対象にする傾向がみられるという。この論文を読んだかぎりでは、台湾の国語教科書に導入されたこれら現代日本児童文学作品の選択基準は、あくまでも教育的なものであるようだ。政治的な匂いがしないのは、どことなくほっとできる。

 張桂娥氏によれば、「国定教科書時代に小学校国語科教科書に導入され、正式な学習材として教室の中で堂々と読まれた日本児童文学作品は、管見に入ったかぎりでは、ほとんどみあたらない。つまり、今回(1994年度版)の国語実験教材に採用された作品群は、現代日本児童文学の創作として、初めて台湾の小学校教育現場に受容された先駆的な存在であると考えられる」とのこと。この実験がどのように評価され、いまはどうなっているのか、「その後」が知りたいものである。

読んだ論文:張桂娥「台湾小学校国語科実験教材における現代日本児童文学作品の受容」(『天理台湾学会年報』、2002年、資料は2003年)

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